RaceChip ONEを装着し、S660の性能をもっと確かめたくなった。
そこで6月初旬、ワインディングへ。
目的はドライブと、RaceChipの効果確認。
その走行中に、初めてCVTの異変に気付いた。
コーナー手前で突然の衝撃
CVTはデフォルトモード。
コーナー手前でエンジンブレーキを使おうと、左側のマイナスパドルを引いた。
その瞬間。
ガツン。
MTでヒールアンドトゥに失敗して、エンジン回転がまったく合っていない状態でクラッチをつないだような衝撃。
感覚的には、
4速や5速から、いきなり1速に落としてクラッチをつないだような感じ。
「今の何?」
最初は操作の仕方が悪かったのかと思った。
もう一度試してみる。
また出る。
ただし、毎回ではない。
ここから半年近く続く、CVTトラブルの原因探しが始まった。
警告灯は何も出ない
これだけ強い衝撃が出るなら、何かエラーが残っているはず。
そう思った。
ところが、
- CVT警告灯なし
- エンジン警告灯なし
- ディーラーの故障診断でもDTCなし
症状は明確にあるのに、車両側は「異常なし」。
これが今回のトラブルを難しくした大きな理由のひとつだった。
どんな時に発生するのか
何度か走行して条件を確認していくと、少しずつ傾向が見えてきた。
特に発生しやすかったのが、
35km/hから50km/h台でのシフトダウン。
その中でも、46〜48km/h付近ではかなり高い確率で発生した。
一方で、
- アクセルを入れながらシフトダウンすると出ない
- ブレーキを踏んでいても発生する
- 上り坂でも下り坂でも平坦路でも発生する
- SPORTモードでは出ない
という特徴もあった。
SPORTモードではマニュアルモードとなり、基本的に1段ずつシフトダウンしていく。
それに対してデフォルトモードでは、パドルを引いた時の制御が明らかに違うように感じた。
正常な時と症状が出る時
50km/h付近で走行中。
一度プラスパドルを引くと、表示は6速。
そこからマイナスパドルを引くと、5速へ落ちる。
アクセルを少し入れながらシフトダウンした時も5速。
ところが症状が出る時は、
50km/h付近から、いきなり3速表示。
回転数も一気に上がる。
体感的には、1段ではなく2〜3段まとめて落としているようだった。
ただ、不思議なのは同じように高回転になっても、強い衝撃が出ない時もあること。
単純に「3速に落ちるから異常」というだけでは説明できなかった。
7月20日|バルブボディ、フィルター、ストレーナー、CVTF交換
まず行われたのが、
- CVTバルブボディ
- フィルター
- ストレーナー
- CVTフルード
の交換。
これで直ることを期待した。
しかし――
完治せず。
ただし、変化はあった。
それまで20〜30km/h付近でも出ていた症状は、ほぼ出なくなった。
つまり、交換した部分には一定の効果があったように思えた。
しかし35〜50km/h台、特に46〜48km/h付近の症状は残った。
8月31日|トルクコンバーター交換
前回の部品交換後、ディーラーにしばらく預けてデータ収集。
その結果、ロックアップ制御がうまくいっていない可能性があり、トルクコンバーターを交換することになった。
そして、トルコンとCVTFを交換した。
今度こそ――。
しかし、完治しなかった。
センサー?
ハーネス?
プログラム?
CVTの回転センサー?
回転センサーも確認し、汚れがあったため清掃して元に戻した
が、症状に変化はなかった。
外見上、センサー自体にも明確な破損は見つからなかった。
9月14日|ディーラーと今後について打ち合わせ
この時点で、ディーラーと今後の対応について話し合った。
これまで順を追って部品を交換してきたことで、低速域の症状は改善している。
一方、現在残っている35〜50km/h台の症状については、以前取得した低速域のデータだけでは原因を特定できない。
発生する速度域で改めてデータを取得し、分析する必要があるとのことだった。
さらに、
- 前オーナーが高負荷で使用していた可能性
- 一部を修理したことで、別の箇所に負荷が移って症状の出方が変わっている可能性
- 最悪の場合、内部損傷が進行して走行不能になる可能性
も否定できないとの説明を受けた。
ここで選択肢は大きく2つ。
対策1|CVT ASSYを丸ごと交換
安全を優先するなら、CVTを一式交換する。
対策2|さらにデータ収集を続ける
症状発生時のデータを取得し、原因と思われる部品を交換。
改善しなければ、さらに調査と部品交換を繰り返す。
ただし結果的に、
いろいろ部品を交換したあとで、最終的にCVT丸ごと交換
になる可能性もある。
保証の関係もあり中古車販売店と協議の結果、対策2のデータ収集を続けることになった。
気温が下がると症状が減った
10月に入り、少し変化が出てきた。
夏場は頻繁に発生していた症状が、外気温20℃前後になるとかなり減った。
ただし、しばらく走行して十分に暖まると、46〜48km/h付近で再び出る。
さらに55〜60km/h台でも発生することがあった。
ここで、
熱が関係しているのでは?
と考え始めた。
CVTF温度が上がって粘度が下がることで、
- 油圧制御
- 潤滑
- プーリーやベルト
- ベアリング
などに影響が出ているのではないか。
ただし、この時点ではCVTF温度そのものを測定できていない。
あくまで症状と外気温、走行後の状態から考えた仮説だった。
10月11日|「症状が再現しない」
データ収集のため再度ディーラーに預けていたが、
「症状が再現しない」
との連絡があった。
これまで交換してきた部品に当たりがつき、回復してきた可能性もあるとのこと。
ところが。
その帰り道。
下り坂で、また症状が発生した。
さらにワインディングを高負荷で走行すると、48km/h付近でこれまでと同じ強い衝撃が頻発。
やはり、CVTが十分暖まった状態で発生しやすい。
気温が低い時は減る。
でも、消えたわけではなかった。
CVTの中を自分の目で見てみる
原因が分からないなら、見える範囲だけでも自分の目で確認したい。
そこでファイバースコープを購入した。
CVT内部を確認してみる。
ベルトやプーリーには、目視できる範囲では明らかな大破は見つからなかった。
しかし、気になるものがあった。
周辺のギアに、異物を噛み込んだようにも見える傷。
そしてドリブンプーリー付近のベアリング。
ファイバースコープ越しに見ると、
ベアリングのボールが欠損しているように見える部分があった。
もちろん、この画像だけで断定はできない。
ただ、傷のあるギアはそのベアリングのすぐ近く。
もしベアリングから金属片が発生し、それがギアに噛み込んだのだとしたら?
さらに高温時にCVTFの粘度が下がり、ベアリングの状態が変化して症状が出やすくなるのだとしたら?
当時はそんな仮説を立てていた。




ベルト、回転センサー等は特に異常がないように見えた。

ドリブンプーリー側のギアに異物が噛みこんだ跡のような傷が見えた。

当該ギア周辺のベアリングを撮影。ボールが欠損しているように見えた。
11月|CVTを丸ごと交換する
最終的に、CVT ASSYを丸ごと交換することになった。
11月16日、ディーラーへ入庫。
11月22日、交換完了。
今回、
- バルブボディ
- トルクコンバーター
- CVT ASSY(新品)
- それぞれの交換工賃
まで、すべて中古車販売店の保証対応。
自己負担はなかった。
これは本当に助かった。
CVT交換後
交換後の第一印象は、
全体的にかなりスムーズ。
CVT丸ごと交換なので当然と言えば当然かもしれない。
そして問題の46〜48km/h。
しばらく走行して暖まってからシフトダウンしてみる。
――3速。
表示上の挙動は変わっていなかった。
ただし、以前のような強烈なショックではない。
強めのエンジンブレーキはかかるものの、衝撃は明らかに穏やかになった。
ここでようやく一つの可能性が見えてきた。
「3速に落ちること」と「故障」は別だった?
新品のCVTに交換しても、50km/h前後から3速へ落ちる挙動は残った。
ということは、
3速へ落ちること自体は、CVTの制御による動作なのではないか。
一方、交換前は内部の劣化や不具合があり、その制御によって生じる大きな回転差が、強烈なショックとして現れていた可能性がある。
つまり、
CVT本来の制御
+
内部状態の悪化
が重なっていたのかもしれない。
これは現在の私なりの考えで、原因を完全に特定できたわけではない。
ただ、CVT交換前後を比較すると、この考え方が一番しっくりくる。
今はこうやってシフトダウンしている
正直、この3速へ一気に落ちる制御は今でもあまり好みではない。
そこで現在は、デフォルトモードでシフトダウンしたい時に少し工夫している。
方法1|一度プラスパドルを引く
一度+パドルを引いてから、−パドルを引く。
これなら1段ずつ自然に落としやすい。
方法2|少しアクセルを煽ってからシフトダウン
アクセルを少し入れながら−パドルを引く。
するとこちらも1段ずつ落ちやすい。
感覚としては、MTでいうブリッピングに近い。
方法3|SPORTモードを使う
SPORTモードではマニュアルモードとなり、基本的に1段ずつ操作できる。
これが一番簡単。
下り坂などで積極的にエンジンブレーキを使いたい時には、SPORTモードを使うことも多い。
半年追い続けて分かったこと
最初は、
「CVTが壊れている」
ただそれだけだと思っていた。
でも実際には、
- バルブボディ交換で低速域は改善
- トルコン交換でも完治せず
- 温度によって症状の出方が変化
- 内部には損傷を疑う痕跡
- CVT ASSY交換で強いショックは改善
- それでも3速へ落ちる制御は残った
という結果になった。
故障していた部分と、S660 CVT本来の制御。
この二つを分けて考える必要があったのだと思う。
そしてこのトラブルを追い続けたことで、私はS660のCVTそのものに以前より興味を持つようになった。
なぜこんな制御をするのか。
ロックアップはどう使われているのか。
アクセルを煽るとなぜ1段ずつ落ちるのか。
CVTなのに、意外と奥が深い。
この半年間のトラブルは大変だった。
でも結果的には、R’s 660 PROJECTでCVTを深く考えるきっかけにもなった。
最後に
S660 CVTは情報が少なく類似症例が見つからず本当に大変でした。
今後、S660 CVTの購入を検討している方やN-BOX、N-ONEなどNシリーズでも本件が参考となれば幸いです。
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→関連記事:なぜS660でCVTを選んだのか?
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